リアリティのダンス

2013|監督:アレハンドロ・ホドロフスキー|チリ、フランス


厳しすぎる父と、言葉が全部オペラ調になってしまう母、そして金髪ロン毛の素直な少年。

訳のわからないおかしな登場人物のオンパレードなのだが、感情的な部分が妙にリアルだ。自信に満ち溢れていた父が自分の無力さを知ることになったり、すぐオペラ調に歌ってしまう母の 妙に堂々とした振る舞いとか…ありえなさそうなのに、ファンタジーとは言いにくい。
世の中にはたくさんの嫌なことがある。肉体的、精神的な痛みをこらえること。人種や外見や貧富の差などでのイジメ。故意ではないが、自分の行動がきっかけで人が死ぬことになってしまった時「人殺し」と指さされること。良いことをしようと思っても気持ちが通じないこと。人間の死ぬ瞬間を見ること…どれも経験したくないし、見たくもないけれど、この映画の中の少年はその全てをしっかりと見なければならない。辛くて海に飛び込もうとする時もあったが、老人となった自分が少年を後ろからそっと抱きかかえる。「死んではいけない」と。老人と少年がいっしょに体を揺すり、まるで踊るかのように腕をあげ、体を動かすシーンが胸にしみる。いくら目をつぶっても苦しみからは逃れられない。でも、生きていればいつか「生きててよかった」と思える日が来るかもしれない。それを信じたい。