特集:オーキッドの好きな映画

◼︎ヤスミン映画の思い出

マレーシアの監督、ヤスミン・アフマドの映画に初めて触れたのは6年程前のことである。初めて観るマレーシア映画に興味津々だった。だが、当時狂わんばかりに韓国のラブストーリーを観ていた自分にとって、『細い目』は、ラブストーリーとしてはなんとなくお話の力が薄いように感じた。ただ、私はそれまでマレーシアという国をほとんど知らなかったので、マレー語、中国語、英語など複数の言語が混在する国ということがとても興味深く、心の中に何かが引っかかった。

その後、別の映画祭でヤスミン監督の『ムクシン』が上映された時、迷いなく観てみようと思った。もう1本観たら監督の作品の雰囲気が掴めるような気がしたからだ。上映場所はアネテ・フランセ文化センター。チケットを購入するとき長蛇の列に並んだことから、ヤスミン監督の人気の高さをひしひしと感じた。場内は満席で、たくさんの人が補助席や階段に腰掛けて観ていた。しかもその多くが男性。子どもの物語のはずなのに、何故こんなに男性ばかりが集まるのだろうかと不思議な気がしたし、自分がここにいることが場違いなのかもしれないと思ったことを今でもよく覚えている。

『ムクシン』は鑑賞初回から衝撃を受けた。それ以来、ヤスミン・アフマド監督の大ファンとなり、監督の全作品(6本)を鑑賞している。どの映画も日本ではDVD発売されていないため、興味を持ってもすぐに観られるわけではなかった。映画祭等で一挙に上映される機会があったとしても、社会人の私は一挙に観られる時間もなく、お金や体力もなく、少しずつしか観られない。けれども幸運なことに、ほぼ毎年のようにどこかで上映を企画してくださるところがあって、本当に少しずつではあるが、鑑賞の機会に恵まれた。時間をかけて制覇すると共に、繰り返し観る楽しさも知った。毎年のように同じ場面で泣いたり考えさせられたりしながら、今もヤスミン作品に育てられている。

たくさんの映画に触れたいと思っている私は、いつも時間が足りない。でもヤスミンの映画に触れられるのであれば、他の映画は我慢してでも観に行きたい。それぞれもう複数回観ているし、DVDが欲しいとも思う。しかし、スクリーンで何度も繰り返し観てきたからこそ、これだけの愛着があるような気がする。
好きな映画をスクリーンで観られることほど幸せなことはない。
その想いを繰り返すごとに、ヤスミン作品は自分の一部となっていき、「私の映画」になるのである。


◼︎オーキッドの好きな映画

最初に観た時はストーリーに特段魅力が感じられなかった『細い目』。
だが、何回も観ているうちに、自分の中の感覚が変わっていった。もう少し、この映画の世界を味わってみたいという気持ちが膨らんだ。

この映画の主人公は、香港映画好きのマレー少女・オーキッド。金城武ファンで、クローゼットの中にポスターやプロマイドをこっそり貼っている。彼女の友人はディカプリオ好きのようだが、オーキッドは流行りのイケメン俳優とかロマンチックなラブストーリーを「げー。」と思うタイプの人間だ。周りに流されることなく自分の趣味を貫き、誰に何と言われようが金城武命!(多分)
そんな彼女が「『天使の涙』の金城武をみてよ!」と語るシーンがある。

私はこれまでほとんど香港映画を観てきていない。自称アジア映画ファンなのに、そこスルーしてた!とハッとしたため、『細い目』でタイトルが登場する香港映画を観てみることにした。

男たちの挽歌

ジェイソン(オーキッドの彼氏)の友人と香港映画で盛り上がってしまうシーンで出てくるのが、ジョン・ウー監督作品。

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オーキッドはちょっと変わった感覚のコだ。すごく可愛いけれど、女の子たちにはちょっと引かれちゃうようなタイプ。日本だったら浮くだろうなぁ。でも私は私自身も変わったタイプの人なので、オーキッドのような人は結構好きです。

オーキッドが臆せず男子に突っかかっていくのは、こういう映画の影響なのかもしれない。


天使の涙

オーキッドはこの映画の金城武をとても気に入っている。

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ホント変わった映画です。
この映画の金城武がいいのか…


恋する惑星

露店でDVDを売るジェイソンから、タダでこの映画(DVD)を渡されるオーキッド。「観ても気に入らなかったらお代はいらないから」

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サングラスにレインコート、カツラの女にはオーキッドが憧れそう…
パインの缶詰を30缶食べ続ける金城武が超キュートだ。


◼︎偶然すれ違う人の中に、未来の恋人がいるかもしれない


偶然にも近所のレンタルショップに『恋する惑星』があって感動した。
長い間レンタルショップに置いてもらえる映画は、実は少ない。たくさんの映画がDVD化され、レンタル化されるようになるが、需要がなければ早い時期に姿を消す。そんな中で、ちゃんと残っているなんてスゴい。

おそらくヤスミン監督も『恋する惑星』が好きだったんじゃないかな…と思う。
変わった趣味のオーキッドは何故か先に『天使の涙』を観るけど、ロマンチックな文学青年であるジェイソンは、『恋する惑星』の方が面白いことを知っていたはず。ツガイとも言われているこの映画を絶対観て欲しいという思いと共に、映画に出てくるような偶然の出会いに驚いたのでは。

それから、写真館で映画スターのようなポーズで写真を撮るシーン。きっと映画で出会ったからなんだろうな〜!と妄想した。オーキッドが『恋する惑星』を観るシーンは出てこないけれど、絶対観たはずだし、絶対好きだと思う。そういえば、あのありえない電話(ラスト)で「お金払ってなかった」って言ってた!(気に入ってた、ってことね!)


3本の香港映画を観て、『細い目』への理解が断然深まったように感じる。
映画のような出会いを映画の中で経験するふたり。偶然すれ違う人の中に、未来の恋人がいるかもしれない…『天使の涙』と『恋する惑星』は同じようなナレーションや音楽が使われていることから、共通する記憶の感覚を、一瞬にしてお互い感じたのだと思う。

そして、ジェイソンが必死になっていたのは「どんなモノにも期限がある」を思い出していたからだったのではーーー


映画を観ながら、映画を読み解くのが面白くなってきた。



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